研究テーマ


ICT(情報通信技術)のビジネスへの実装

 ICTがビジネスにイノベーションをもたらす過程は、ビジネスエコシステムの変化として捉えることができます。ビジネスエコシステムとは、まさにビジネスの「生態系」であり、企業や顧客をはじめとする多数の要素が集結し、分業と協業による共存共栄の関係を指しています。ビジネスエコシステムの変化の起点の要素は次の3つが挙げられます。
 1つ目が「オープン化の進展」です。オープン化とは、従来情報システムやソフトウェアの分野で用いられてきた概念であり、自社や特定のベンダー等の独自仕様で構成されたシステムを標準規格などで置き換えたり、仕様や接続方法を外部に公開したりすることを意味します。
 2つ目が「多様なプレーヤーの参加」です。市場の成熟化等を背景に、多様な要素を組み合わせた新たな付加価値を提供する上で、一企業で完結させることがより難しくなっていることから、既存の業種や業界を超えた連携が不可欠になり、多様なプレーヤーが事業等に参加することが当たり前になりつつあります。 ICTは、これらの多様なプレーヤーの参加や連携を促進する(つなぐ)機能を担っています。
 3つ目が「交換する価値形態の多様化」です。AI・IoT時代では、「データ」や「モノ」、「処理」など従来の貨幣価値とは異なる価値形態の交換が行われつつあります。新たなICTの進展を背景に、新たな価値形態の交換、すなわち経済における新たな「血液」により、新たな財・サービスを生み出されるようになります。(総務省, 2018)
このようなICTがデジタルトランスフォーメーションなどを通じて、ビジネスにイノベーションを起こす本質を明らかにする研究に取り組んでいます。


マルチメディアとコミュニケーションの進化

 スマートフォンが急速に普及しています。20代のスマートフォン個人保有率は94.5%にのぼり(総務省, 2017)、今やスマートフォンは社会インフラと言える状況になっています。携帯端末上で扱えるメディアは、メール、インターネットブラウジング、動画、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)など多岐に渡るようになりました。これは移動体通信ネットワーク技術の発展を起点として、携帯端末の進化から高度な情報処理ができるようになり、新たなコミュニケーションサービスの登場によって様々なメディアが扱えるようになったためです。一方で、スマートフォンを悪用した犯罪なども増加してきています。このようなICTの進化による光と影の両面に注目をして、メディアやコミュニケーション方法がどのように進化してきたのかを明らかにする研究に取り組んでいます。


ソーシャル・イノベーションにおけるICTの役割

 現在わが国は人口減少に伴う経済力の低下などにより、多くの社会課題が顕在化してきています。このような状況下において、社会的課題をビジネスの機会として捉え、持続的な事業活動として展開する「ソーシャル・ビジネス」に注目が集まっています。ソーシャル・ビジネスは、谷本によると社会性、事業性、革新性の3要件を満たす社会的企業が取り組む事業として定義されており、特に革新性の部分を社会課題の解決に資する新しい仕組みを創出するものとして「ソーシャル・イノベーション」と呼んでいます(谷本, 2006)。
 近年、社会起業家などがICTを活用してソーシャル・イノベーションを創出するケースが注目され始めています。ソーシャル・イノベーションの創出手段としてICTに焦点を当てた調査・研究を通じて、どのようなメカニズムでソーシャル・イノベーションが創出され、ICTがどのような役割を果たしているかを明らかにする研究に取り組んでいます。